美羽が中庭まで移動すると、二つの影が見えた。
片方の影は校舎の壁に背を預けている。もう一つの影はその影の襟首をつかんでいる。
美羽は思わず
「瀬田君っ!?」
と叫んだ。
影、夏目が握りこぶしを振り下ろす寸前で彼女は叫んだ。
夏目はブスリとした顔で声のしたほうを見た瞬間、顔に焦りの色が浮かんだ。
ヘッドフォンが外れ、唇から血が流れている瀬田も、彼女のほうを見た。
「美羽………なんでここにいんだよ」
夏目は瀬田の襟首から手を離した。
歩み寄った美羽は、そんな夏目を通り過ぎてしゃがみこんだ。
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