美羽、という単語に反応した瀬田に
「一緒にカフェでもどうよ」
と極上のえさを目の前に垂らした。しかし注意深い瀬田魚はなかなか食いついてくる気配を見せない。本当はひと思いにばくりといきたいところだが、恥と疑心が混ざり合って困惑しているのだろう。そこで彼女は
「無理だったらいいよ?ほかの男子つれてくだけだし」
せっかくのえさを台無しにするぞ?と微笑をたたえたまま脅した。
きょろきょろと大きな瞳を宙から優衣の間をうろついていたが、やがて落ち付き
「………行く」
と言った。
財布の中身を思い浮かべながら瀬田は正解を選んだのだ。
優衣が勝ち誇った顔をしたのは言うまでもないだろう。


