最後のおかずを口に入れ終えた美羽が立ち上がった。
「ちょっとジュース買ってくるね」
「いってらっしゃいー」
小銭を握りしめ、教室の外へと出ていく美羽と入れ違うように数分後に瀬田が入室した。
彼はいつもの無表情で窓際に陣取り、耳でささやく音楽に意識を集中させた。
自分の世界に浸っていると、ぶち壊すように隣から机と手のひらが合わさる音がした。
薄目を開け音源を探すと
「ねえ。今日暇?」
怪しい笑みを携えた優衣が立っていた。
瀬田は何も言わず、じっと机の掘りキズを見つめた。
「帰りどっか行かない?」
「………今日は無理」
彼は素直に言った。