カバのように開いた口をあわてて閉じる。


優衣が騒ぎながら指差した方向には、確かに瀬田が無表情で歩いていた。


行先は美羽たちと同じだろう。


「わー!すごいね!一緒の通学路だったんだー!」


美羽がゆっくり歩いてくれたからだね!と感謝の念を送られる。


「っはっはぁ」


戸惑いを返し、美羽は先をとことこ歩く瀬田の背を見つめた。


毎日毎日何を聞いているのか、今日もトレードマークのぼろいヘッドフォンをつけることで髪を全部後ろに流している。


「ねえ!話しかけてみようよ!」


テンションが上がりすぎた優衣は調子にものってきて、そんなことを言い始めた。


「え?無理じゃない?」


「いーじゃんいーじゃん!行こうよ!」


腕を組まれたまま、美羽は優衣の思うがままに今まで一番強く引っ張られた。