唇が開かれた時間は短い。


ならば短い言葉なのだろう。


と、たたき起しても寝起きの頭は単純な推理しかださない。


めったに音を発しない彼が自分だけになんと言ったのか、気になる。


これって恋なのか?美羽は茫然と思う。


一度も話したことすらないのに?


目があっただけで恋に落ちるなんて


そんな乙女チックなことが現実にあれば、この世は乙女だけになってしまう。


だったらなんなのだ、と問われても言葉に詰まってしまうのだが。


ふわぁ~と大きな欠伸をした瞬間


「あっ!瀬田君だ!」


優衣が歓喜の声を上げた。