「………」
熱でうなされている瀬田は、昔の思い出を脳内に呼び戻していた。といっても大したものではない。
暇さえ見つかれば文字を書いていた彼にとって、青春や幼児期の記憶は一切なかった。
いつも1人で空を見上げ、たまに思いつくフレーズを紙に書き写す。
ただそれを呼吸の代わりにして生きているようだった。
「………だった………」
今はどうなのだろうか?
ふとある女性の顔が思い浮かんだが、頭痛によってかき消されてしまった。
学校への連絡で生気を使い果たした彼は、はたりと意識を手放した。
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