「………数学」 「え?」 瀬田の視線の先を見下ろすと、手あかのあまりついていない参考書があった。 「あっうん。分んなくてね。頑張ろうと思ったんだけどやっぱし分んないや………」 「………どこ」 「は?」 「………どこが分らない?」 彼は参考書に手を伸ばし、パラパラと無を極めた顔でめくった。 しばらく美羽は展開の速さについていけず戸惑ったが、 「あっ等式の証明………」 そういうと、彼は狙ったかのようにぴたりとめくる手を止め、そのページを開け机の上にポンッと置いた。