瀬田はじぃーと授業中と同じように美羽を見つめた。
近くで見つめられているようだ。
実際は大分離れているというのに。
胸がわしづかみにされたような感覚に陥り、こっちからは目線が外せない。
何時間もの時をそうして見つめあっていたような気がする。
やがて辛抱が切れたのか瀬田から目を離した。
初めて勝ったような気になる。
すぐまた美羽に目を戻し、ゆっくりと開かれないと思っていた唇が動いた。
反射的にさらに身を乗り出す。
だが数十センチ近くなったからといって耳まで良くない美羽には、その言葉は聞き取れなかった。
すっと無駄な動作なく瀬田が立ち上がる。
それからは一度も目をくれず、すたすたと木の葉の中に紛れ、中庭から出て行った。


