壁まで飛ばされた椅子をピアノの前にセットし、座る。 ただそれだけの動作なのに、彼がやると何故か美しい。 壁のベートーベンを驚いているに違いない。 目を閉じ、頭の中で曲を思い浮かべる。 すぅっとまぶたを開け、瀬田は指先に力を込めた。