「………っいいでしょう。下がりなさい!次!萩元さん!」
日笠は思った通りにいかなかった腹いせに、歌が苦手な男子の名を差した。
うわぁと悲鳴を上げる男子を振り返らず、瀬田は言う。
「………意味がない」
初めて瀬田の声を聞いた日笠とクラスメイトは目を丸くした。
優衣と美羽はただじっと成り行きを見守る。
「歌詞に意味を持たせるために必要なのは声の大きさではない。気持ちだ。ただしこれは人にしろと命令されたからといってできるものじゃない」
淡々と彼は語った。
「自分がどう感じ、自分が思ったままに歌う。それが詩だ」
そっとヘッドフォンに触れる。
「それに旋律を奏でるピアノが下手ではこめるものも込めれない」
ぷっとこらえ切れなかった男子が吹き出す。


