市川はそう言うと、あたしのおでこにキスをした。



「!?」

突然のことに、体がきゅっと硬くなる。



「唇へのキスは──、わかるよな?」


「いち、か、わ……?」



見上げた市川は、あたしの知らない“男の顔”で微笑んだ。



「とりあえず、部屋行こうか」


まぶたに残った涙を親指で拭うと、今度はよく知っている市川の顔で微笑んだ。