なにもないこいものがたり



ただ今、保健室
とっても気まずい空気
どーぞどーぞ


お嬢様は何を言う訳でもなく、ただひたすら俺を睨んでいた
(普通の人の睨みの何億倍も優しい眼差しです)


「授業をサボられて、何をしてらっしゃるんですか」

「‥あー」

「お陰で午後の授業は、あたし教科書がないので授業にならなかったではないですか」


    知  る  か

‥なんて、言えるか


「はーるーくーん 女の子に怒られて、何してんの‥っと こんにちは」

カーテンを開けて凌央が顔を覗かせたがお嬢様を見て目を大きく見開いたかと思ったら、ニヤニヤ笑いだした(顔が)


「私 保健室の騎士と呼ばれてます。凌央です」


猫被りの不良保健医め
何が騎士だ、むしろ悪役だろ


「ご機嫌よう、わた」

「知ってる知ってるー 榛の婚約者、だろ?」


「は?」
「え?」

声が保健室内に響く
そして少し、間


「‥あ、れ
違ったっけ?」

「全然違ぇよ、くそ凌央!」

「まー、ちょっと間違えただけじゃんよ。そうカッカすんな」


"そうカッカすんな"?
普通に名字読んだだけで、キレて人をボコボコに半殺しにするてめぇにだけは言われたくないセリフですよね、ホント

しかも全然ちょっとの間違いじゃねーし
婚約者、の前に婚約してません
むしろ俺の片思‥やべ ちょっと今チクッてしたし痛いしなんか悲しくなってきた‥


ホント気まずいわー
どーぞどーぞ