1時間ほど経っただろうか。
インターバルを挟みながら、僕とケントは延々と組み合い、投げを打ち、技を掛け、柔道を楽しんだ。
窓から射し込む美しい月明かりが、畳の上で仰向けに寝転がる美しさとは無縁の僕らを場違いに照らす。
「はぁ、はぁ…」
「ふぅ…疲れたなァ」
息を整えるのに必死の僕とは対照的に、ケントは心地よい疲労感に酔いしれている感じだった。
「そういや、ケントどっかケガしてるんじゃなかった?それで部活引退したんでしょ」
「あァ、腰がちょっとな。アユムくらい軽いヤツとやるなら平気なんだよ」
「そっか…」
天井を見上げたまま、僕らは会話を続けた。
「アユムはさァ、弁護士なるんだろ」
「…分かんないよ。勉強はしてるけど、受かるかどうかは別」
「すげぇなァ…」
「凄くないって、全然」
ケントに凄い、と言われて、僕は嬉しかったんだけど。
「いや、すげぇよ、アユムは」
「やめてって。恥ずかしいだろ」
本当に凄くはないんだ。勉強も全然はかどっていないし、目指すだけなら誰でもできる。
ケントの方が、よっぽど凄い。
ひとつのことに真面目で、真っ直ぐで、ストイックで。
僕のヒーローで、憧れで。
「ケントの方が、凄いって…」
「はは…どこがヨ」
バツが悪そうに、ケントは天井に向かって笑いかけていた。
「とにかく、俺はケントが凄いって、ケントみたいになりたいって、ずっと思ってたんだからな」
ちょっと怒った口調で言ってやった。
「うそつけ」
「ホントだし」
少し、ケントが考え込むように口をつぐみ、そして再び開く。
「…今でも?」
「もちろんっ」
即答してやった。
「ハハハ。物好きだなァ、アユムは」
ケントは再び、バツが悪そうに、困ったように、でも、ちょっと嬉しそうに笑った。
インターバルを挟みながら、僕とケントは延々と組み合い、投げを打ち、技を掛け、柔道を楽しんだ。
窓から射し込む美しい月明かりが、畳の上で仰向けに寝転がる美しさとは無縁の僕らを場違いに照らす。
「はぁ、はぁ…」
「ふぅ…疲れたなァ」
息を整えるのに必死の僕とは対照的に、ケントは心地よい疲労感に酔いしれている感じだった。
「そういや、ケントどっかケガしてるんじゃなかった?それで部活引退したんでしょ」
「あァ、腰がちょっとな。アユムくらい軽いヤツとやるなら平気なんだよ」
「そっか…」
天井を見上げたまま、僕らは会話を続けた。
「アユムはさァ、弁護士なるんだろ」
「…分かんないよ。勉強はしてるけど、受かるかどうかは別」
「すげぇなァ…」
「凄くないって、全然」
ケントに凄い、と言われて、僕は嬉しかったんだけど。
「いや、すげぇよ、アユムは」
「やめてって。恥ずかしいだろ」
本当に凄くはないんだ。勉強も全然はかどっていないし、目指すだけなら誰でもできる。
ケントの方が、よっぽど凄い。
ひとつのことに真面目で、真っ直ぐで、ストイックで。
僕のヒーローで、憧れで。
「ケントの方が、凄いって…」
「はは…どこがヨ」
バツが悪そうに、ケントは天井に向かって笑いかけていた。
「とにかく、俺はケントが凄いって、ケントみたいになりたいって、ずっと思ってたんだからな」
ちょっと怒った口調で言ってやった。
「うそつけ」
「ホントだし」
少し、ケントが考え込むように口をつぐみ、そして再び開く。
「…今でも?」
「もちろんっ」
即答してやった。
「ハハハ。物好きだなァ、アユムは」
ケントは再び、バツが悪そうに、困ったように、でも、ちょっと嬉しそうに笑った。

