柔道っていうのは、組んだ瞬間に相手の実力が7、8割は理解できるスポーツだ。



格段に実力差があると、相手に組まれたらこっちは何もできずに投げられる。



数秒間組み手争いを続けたあと、ケントが素早い踏み込みと共に僕の襟を掴む。



「うっ…」



持たれた腕を振り切れない。凄まじい腕力。インターハイ出場の肩書きは伊達じゃない。



「らァっ!」



フェイントも何もなく、ケントの内股が僕を襲う。常人離れした引き付けで身動きが取れないまま、ケントの身体を軸に、僕の身体は勢い良く宙を舞った。



ドォンという轟音と共に、僕は畳に叩きつけられた。



「…も、もう一本っ!」


「ヨシっ、こい、アユム!」



揺れる景色のなか、ふらふらと立ち上がり、再びケントと対峙する。