「妹の頭の中、真っ白にしてやろうか?」
小さな瓶を沙羅に見せる。
「ッ!?それだけは、妹だけは!!」
「嘘だよ、だから戦え。」
大雅は沙羅の前で片膝をついて、沙羅のあごを持って顔を上げ、右袖を上げる。
「さあ、いつものように戦ってこい。」
懐から注射器を出す。
「……っ………。」
それを見た沙羅が震える。
「俺の命令に従ってい―――ッ!?」
殺気を感じ、大雅は後ろへ飛び退く。さっきまで大雅がいた場所に、ナイフが突き刺さる。
「腐った野郎だな。」
ギロリと大雅を睨みつける蓮が立っていた。
「どうして…。」
額が血ににじんだ沙羅が蓮を見る。
「バカ、私のことなんて放っておけばいいものを…。」
蓮はハンカチで血を拭いてあげる。
「男は尻にしくものだって、円お姉様が言ってた。だから、魔里の奴隷になるなら許してあげるよ?」
魔里が2人の前に立ち、巨大ハルバートを大雅に向ける。
「北の狼に南の吸血鬼の妹か…。捜す手間が省けた。」
眼鏡の位置を直しながら呟く。
「立てるか?」
「私にかまわないで空港に入ればよかったのに…。」
「あの子と約束したんだろう?あの子を保護した身として、悲しませることはできないんだよ。」
沙羅の左腕を自分の肩に回して、蓮はゆっくり立ち上がる。
「あんた、お人好しって言われない?」
