「止めないか?こんな街中だ、関係のない人を巻き込みたくない。」
「チッ。」
了承の言葉の代わりにリンゴをかじる沙羅。
2人は近くのベンチに座る。蓮は真ん中に座るが、沙羅は左端に座って蓮から距離を取る。
「何してたんだ?」
「あぁ?テメェ、バカか?敵のお前に言うわけねぇ〜だろ。」
むしゃむしゃリンゴを食べながら言う。
「別に仕事のことを聞いてるんじゃない。お前のことを聞いてるんだ。」
「逆にテメェは何してんだよ?」
「私か?私は考え事をしていた。燐を助けたこと、燐を娘にしたこと。それが正しかったのかを…。」
沙羅は目を丸くしていた。目を見れば蓮が嘘をついていないのはわかる。そして普通に敵である自分に話したことに驚いたからだ。
「あいつを助けたとき、テメェは間違いだったと思ったのか?」
「いや。」
「ならいいじゃねぇ〜か。そのとき正しいと思ったなら、それが正解なんだよ。助けたヤツが罪を犯しても、テメェの責任じゃねぇ。なんでもかんでも自分の責任にすんな。」
食べるところが無くなったリンゴをゴミ箱に投げ入れる。
「そうか、そうだな。ありがとう。」
「ケッ。礼なんて止めろ、調子が狂う。」
「それで、お前は何をしていたんだ?」
「家族……捜してんだ。」
うつむきながら沙羅は言った。
