「あの少年。いい目をしている。」
「ええ。気を抜くと、惚れてしまいますよ。」
少し顔を赤くする沙織をアダムは見つめていた。
「あの少年が大切か?」
「そりれはまあ大切ですよ。でも師匠、いきなりどうしたんです?」
「お前が生徒会の娘達を大切にしているのは知っている。だがもし、あの少年も大切に思うなら見といてあげた方がいい。」
「なぜです?」
沙織は首を傾げて尋ねる。
「あの少年。うっすらとだが、死相が見える。」
沙織の中で一瞬、世界が止まったように感じた。
「しかし、直樹は蓮が見ていますし…。」
「お前も気づいているだろう?蓮はもう長くない。」
アダムの言葉に沙織は言葉を無くす。
「師と弟子は似ると言うが…。」
アダムはテントの中に入り、小魚を食べる。
「蓮は直樹に話さないつもりでしょうか?」
アダムの隣に座る沙織。
「話せば辛くなるだろうな、お互いに。」
「お互い?蓮は死を受け止めるつもりですし、辛いのは直樹だけなのでは?」
「いや…。」
小魚を食べる手を止める。
