逃げ出した直樹と遥に蹴り飛ばされたアダムが先に帰って、テントの前で魚を焼いていた。彩華達も帰ってきて、昼食が始まった。
「もう、お婿に行けない…。」
魚を食べながら呟く直樹。
「だ、大丈夫だよ、直樹くん!なんなら…私がお嫁に行くし…。」
「え?何?後半聞こえなかったんだけど?」
「い、いや、何も言ってないよ!」
彩華が慌てて、顔と手を横に振る。
「心配しなくても、私がお嫁に行くわよ〜♪」
彩華の隣にいた遥が直樹に抱き付こうとする。
「せいっ!!」
「ごふっ!?」
彩華の裏拳が顔面に当たり、遥は吹き飛ぶ。
「ふぅ。危なかった…。」
額の汗を拭いながら言う彩華。
「私も長く生きてきたが、リアル三角関係を初めて見た。」
「両者の矢印は一方通行ですがね。」
アダムは沙織に小魚を食べさせてもらっていた。
…………………。
…………。
……。
食べたり話したりしているうちに、空はオレンジ色に変わっていた。
「それじゃ、帰るよ。」
「ああ、またな直樹。」
沙織が小さく手を振る。
「少年。何かあった時には、ここに来るといい。話し相手くらいにはなれる。」
「ああ、わかった。」
そう言って、直樹は彩華達の後を追った。
