「少年。猿は一緒に入ってもいいのに、ペンギンが一緒に入ってはいけないのか?」
「お前がただのペンギンなら許すが、煩悩を持ったペンギンを許すわけにはいかねぇ〜んだよ。」
直樹はそのままアダムを掴みながら男湯に入った。
「ふぅ。いい気持ちだ。」
乳白色の湯船に浸かり、リラックスする直樹。そんな直樹を隣にいたアダムは見つめていた。
「なんだよ?」
「少年。何か悩みでもあるのか?」
「どうしてだ?」
「そんな顔をしている。」
「そうか…。俺、昔の記憶が無いんだよ。でもたまに夢で女の子を見るんだ。すごく大切な人だった気がするんだけど思い出せない。」
肩までお湯に浸かり、直樹は空を見上げた。
「意外に近くにいるのかもしれないな。」
「そんな簡単に見つかれば苦労はしないよ。」
直樹は苦笑しながら言った。
「私の方が大きいわよ!」
「はるっちより、私の方が大きいもん!」
柵の向こう側から遥と彩華の声が聞こえる。
「興味深い話だ。そう思わないか、少年。」
「俺は何だか嫌な予感がする…。」
直樹は立ち上がって風呂から出ようとする。それと同時に男湯と女湯の間の柵が倒れた。
顔にかかったお湯を払い、目を開ける。女湯の方で、優華と沙織とエリーゼが肩まで浸かっていた。
「あれ?彩華さんと遥は?」
直樹はてっきり、彩華と遥が裸で争っている光景が見えると思っていた。
