「なっ!?なぜだ…。」




次狼が膝をつき、うなだれる。







「本能的に逃げたんだと思うけど。だって狼だし…。」




雪が次狼の背中をさすりながら言う。






「俺だって…俺だって…。鹿とふれあいたいんだぁ〜!!」




いつも冷静でクールな次狼が叫んだ。






「プププ…。秋山(あきやま)の奥さん聞きました?あの顔でプリチーな鹿さんとふれあいたいんですってよ。」





「ククク…。ダメよ、龍堂の奥さん。ああいう人ほどかわいい物好きなんですから〜。」




「「あはは、あははははははは!!」」





菫と晶が笑い出す。






「ぐっ…。ゆ、雪。ショットガン持ってないか?」




「持ってるわけないでしょ……。落ち着きなさいよ。」




次狼の頭を撫でて落ち着かせる雪。






「そ、そういえば、蓮はどこ?」




話をズラそうと雪は蓮を捜そうと周りを見回す。蓮は民家の塀を眺めていた。正確には塀の上で寝る猫を見ていた。




その猫は大きく丸々と太っていた。






「なんて見事な!ここまで成長するのに、一体どれだけの年月を…。とりあえず、拝んでおくか。」




神にすら手を合わせない蓮が、猫に手を合わせていた。