「どちらにせよ、入院はしないだろうな。それで、蓮の病気のことだが、一体何なんだ?今まで君の手伝いをしてきたが、こんなウイルス見たことがない。」





「一部では『選ばれし者』とか言われているけど、正式な名前は無いわ。宿主のDNAに寄生してテロメアを異常な速度で破壊、つまり寿命を奪う。その代わり、ウイルスは宿主の肉体を強化することができる。みんなが言ってる力と言うのはそのことよ。心臓と血管を分厚く固くさせ、常人では耐えられないほどの速さで血液を体中に運ぶ。これによって、宿主は身体能力の限界まで高められ、計り知れないスピードとパワーを得ることができる。」






「等価交換か。」





「違うわ。蓮が元の体のときにしか使えなし、力を使えば当然体に負担をかける。さらに、このウイルスは宿主の精神にまで侵食するの。扱えてるのが不思議なくらいなのよ。」





「なるほど…。しかし、自分より若い者が死ぬのは、いつまでたっても慣れないよ。何のために医学を学んだのか…。」




かなめは蓮を見ながら言う。






「できることは…少しでも、蓮が幸せな時間が過ごせることを願うだけ。」




目を閉じて呟く知佳だった。




…………………。




…………。




…。