「今で40パーセントってところね。」




微笑みながら呟く円。






「(もう血を奪われるわけにはいかない…。ただでさえスピードはすでに円の方が上、これ以上強化されたら手をつけれないからな。)」




ギュッとブレザーを握る。ちょうど左胸の位置、内ポケットがある場所で、その中には蓮の性別を逆転させる『転換薬(てんかんやく)』が入っている。





女の姿になれば、たとえ100パーセント強化された円のスピードすら上回る。






だが蓮はこれを使うわけにはいかなかった。これ以上、この薬を使えば卒業するまでに命を落とす。それは次狼達との約束を破ることになるからだ。







「(面倒な体だ…。)」




自分に呆れながら、心の中で呟く。






「終わりにしましょう。」



刀を肩に乗せて、円はゆっくり歩いてくる。




「負けられないんだよ、俺は。」




高速で目の前を斬り刻むように剣を振り続ける。周りからは錯乱状態に見える。




…………。



……。



…。






「見えました、お嬢様!」



麗花を抱きかかえていた総一郎が叫ぶ。休んでいた麗花は目を開けた。そして円と蓮を見つける。






「蓮殿は一体何を…。」




蓮を見た総一郎が呟いた。