直樹は動揺していた。額の汗が流れ落ちる。目の前には、見たことない遥、そして眠らされ拘束された彩華。






「君が彩華さんを…さらっていたのか。」





「ええ、そうよ。」




「何のために…。彩華さんは関係ないだろ!?」




「関係あるわ。さっきも言ったでしょう?私かこの子か選んでって…。」



氷のように冷たい目で、彩華を見ながら言った。




「あなたは私と一緒になるべき人。無駄死にさせたくないの。」





「何の話をしているんだ…。」





「あなたの知らないこと。知らなければ平和に暮らせて、知れば争いに巻き込まれる。それが無名県の秘密。けれど、あなたはいずれ知るでしょう。そして終わらぬ戦いに身を投じる。」






「そんなこと、どうだっていい!早く彩華さんを返してくれ。」




遥は何も答えずに、懐から短剣を取り出す。






「ねぇ、どうして?私はこんなにあなたを愛しているのに…。」





「遥、だから俺は―――――」





「この女がいるからでしょう!!」




遥は振り返り、彩華を刺そうとする。







「ッ!?遥ぁぁぁぁ〜!!」




銃を取り出し、狙いを定める。発砲音と共に、短剣が空を舞う。