「これ…会長がたまに口ずさみながら作ってた歌だ。完成したんだ。」
楽しそうにギターを弾く蓮を見ながら呟く。
「会長さん、何でもできてスゴイです。」
「そうだな、でも…。」
彩華に目を向ける直樹。
「会長と同じように歌ってる彩華さんもスゴイよ。練習なんてしてなかったのに…。」
「蓮ちゃんに似て、耳がいいのよ。」
いつの間にか隣にいた真由香が言う。
「きっと録音しておいた曲をミュージックプレイヤーに入れて渡したんじゃないかしら。」
「スゴイな…彩華さん。今日の主役じゃないかな。」
盛り上がる観客を見て、直樹は呟いた。
彩華のボーカルにしたライブは大成功。そして卒業祭は終わった。
「楽しかった〜!」
大満足した彩華が飛び跳ねる。
「すごく良かったよ。」
「本当!?直樹くんに言われると嬉しいな〜。」
「彩華。」
不意に名前を呼ばれて、後ろに振り返ると生徒会メンバーがいた。
「何?兄貴。」
「お前にこれを渡す。」
小さな巾着(きんちゃく)を彩華に渡す。
「え?これって…。」
巾着の中に入っていたのは、金色に輝く胸章が5つ。生徒会長、副会長が2つ、書記、会計。
「今日で俺達は生徒会を引退する。明日からお前がみんなを引っ張っていけ。」
「で、でもいきなりだよ…。それに生徒会長になるには兄貴達と戦わなくちゃいけないんじゃ…。」
