「どうして…君が……。」
ナイフで腹を刺された夫役の彩華が膝をついて言う。
「どうして?決まってるでしょ、私とあの子の幸せな未来に邪魔だからよ。」
べっとりと血がついたナイフを持っているのは、直子の親友で実は姉という役の優華。
「まさか…悠治(ゆうじ)も真里奈(まりな)も…君が?」
悠治は悠斗の役名、真由奈は真由香の役名である。
「正解。ご褒美に心臓に刺してあげるね。」
刺された彩華が倒れて動かなくなる。
「ただいま、ごめん遅くな―――。」
帰ってきた直子が、血を流して倒れている彩華を見て、驚き立ち尽くす。
「お帰り、これでずっと一緒だね。」
「ね、姉さん…。なんで…こんな。」
「2人で幸せに暮らしましょう。2度と離れ離れにならないわ。そして……。」
直子にゆっくり近づき抱きしめる。
「絶対に逃がさないから。」
「あ………ぅ……。」
壊れた人形のように動かなくなり、瞳の輝きが無くなり黒く濁(にご)る。
「あは。あはは…。あははははははは!!」
高笑いする優華。それと同時に舞台の幕が下りた。そして体育館に拍手が鳴り響いた。
幕が上がり、出演していた直子達が一列に並び、観客に頭を下げる。
より一層大きな拍手が起こり、劇は無事に終了した。
