牛乳と猫スーツ。




蓮は座りながら言った。ようやく蓮の方を向き、直樹は隣に座った。そしてしばらく波の音だけが聞こえた。







「なあ、直樹。」




話しかけたのは意外にも蓮の方だった。







「好きな子はいないのか?」





「え?」




「好きな子だよ。」




少し笑みを浮かべながら言う蓮。






「わかんないです…。みんな素敵だと思うんですけど、好きだって気持ちにはなっていないんです。」




「彩華なんてどうだ?」




「へ?え?」




意外な名前が出てきて、直樹は困惑した。






「彩華だよ。かわいいだろ?一生懸命だし、あの料理は直樹なら大丈夫だから問題無いしね。」





「今まで近づけさせなかったのは誰ですか…。」




「あはは、そうだな。だがお前は強くなった、だからお前になら彩華を任せられる。」




蓮の顔は、真剣と嬉しさ、それと少しの悲しさが合わさった、自分の子を頼むと言うような親の表情をしていた。






「間違ってたら謝りますけど、会長は優華さんより彩華さんの方を気にしてますよね?」







「そうだな。優華は父親に似てしっかりしているから。彩華はいつも私にくっついてたから、危なっかしくてな。打たれ弱いくせに、怖いもの知らずで…ちゃんと見ていないと、たまに寿命が縮みそうな事をする。私はもうすぐ3年で、すぐ卒業だ。だから誰かに見ててもらいたい、信用できる人に…。」






「俺は…。俺にはまだ、誰かを守れる力はありません…。」