「なんだったんだろ?」
彩華が走り去った方を見ながら直樹は呟いた。
とりあえず戻ろうと思い、直樹は歩き始める。ケータイで時間を確認すると、いつの間にか3時になっていた。ケータイをポケットに戻して、また歩き出す。休みの日の旧館はとても静かだった。
「ん?」
ある部屋に直樹が立ち止まる。そこは図書室だった。
『図書室には飛んでこないでくださいね、貴重な本がありますから。』
「いる……のかな?」
とある女の子の言葉を思い出して、直樹は図書室のドアを開けた。
「失礼しま――――ん?」
ドアを開けて中に入ると同時に、モスキート音ような音が耳に聞こえてくる。
「あ……あれ?」
急に力が入らなくなり膝をつく。
「なんか…急に眠く…………。」
かすれていく視界の中に白髪の女の子が映ったのを最後に、直樹のまぶたが完全に閉じた。
………………………。
……………。
……。
「あ……。あれ?」
目を開けると、見慣れない天井だった。
「気がついた、直樹?」
ベッドで寝ていた直樹の横で、遥が椅子に座りながら本を読んでいた。
