「それじゃ、ここに置いとくから…。ごゆっくり…。」
尋常ではない空気を感じて沙織はダッシュで帰った。
「嘘ついたらハリセンボン飲〜ます。」
指で両頬を押して、菫の口を強制的に開かせる。
「モガァ(待てぇ)〜!?モガ(蓮)、モガガモ(助けて)〜!!」
「嘘ついたから…悪いことだよね?あんなに約束したのに…。ホントは舌を引き千切りたいんだけど、これは私の優しさだから……あはっ!」
笑ってみせるが、目は全く笑っていない。
「モガモガガモ(ごめんなさい)……。」
菫は泣きながら謝った。すると、部屋に充満していたオーラが消えていく。
「次は無いからね。」
笑顔で言って、蓮は書類整理に戻った。
「も、もしかして、菫さんの苦手なものって…。」
「うん、怒った蓮…。」
とりあえずハンカチを渡した直樹だった。
………………………。
……………。
……。
【学食】
「会長に苦手なものがあったんだ。」
「まさか姉貴にね〜。」
2人はお茶を飲みながら話した。湯飲みでお茶をスズズ…とすする2人は、長年付き添った夫婦に見える。
「直樹くんは苦手なものある?」
「ん〜。ゴキブリかな。苦手というか、生理的に無理なんだけどね。いきなり現れるからビックリするよ。」
「私も無理だな〜。」
