そしてスカートのホックを留めようとした時だった。






「あれ?」




毎日やってきた難しいことではないその作業。





「よっ!はっ!」




ただホックを留めてファスナーを上げるだけの作業。






「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」






カチャ。




小さな金属のこすれる音と共に、ホックは留まった。







「ふぅ…。」





長い戦いに勝利した彩華は拳を上げるが如く、ファスナーを上げた。




その瞬間、彼女の耳には勝利のゴングが聞こえた。







「姉さん、ホントに遅刻するよ?」




あまりにも支度の遅い彩華を心配して、優華が部屋に入ってくる。






「ゴメン、ゴメン。今行くよ〜。」




彼女が足を踏み出した時だった。





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ホックA「どうやら俺はここまでらしい…。」




ホックB「頑張って!あなたならイケるわ!!」



ホックA「へへっ…。実は俺、お前のことが好きだったんだ…。」




ホックB「私も…。あなたのことが好きよ!」




ホックA「それじゃ…俺達は両思――――」





ブチッ。





ホックB「ホックA〜!!」




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そんなドラマがあったかどうかは分からないが、彩華が踏み出した瞬間にホックの耐久力は限界を越えて弾け飛んだ。