「早く逃げなさい、直樹くん。次は助けられないかもよ。」
「は、はい。」
ズボンをはいて、直樹は軽く頭を下げて部屋を出た。
「いつもいいところで邪魔が入るな…。」
「いい加減止めたら?お姉さんぶるの。手取り足取りとか言ってるけど、アンタ経験無いでしょうが。」
「何事も雰囲気が大切なん――――クチュン!」
「はいはい、雰囲気ね。いいから服着なさい、1月にそんな格好しないでよ。見てるこっちが風邪引くわ…。」
近くにあった上着を菫にかけてあげる。
「寒い……。」
………………………。
……………。
……。
【次狼の場合】
菫から逃げてきた直樹は、途中で会った次狼の部屋にいた。
「それは災難だったな。」
薬缶(やかん)でお湯を沸かしながら次狼が言った。
「すごく大変でした…。」
コタツで温まりながら直樹が答える。
「蓮も菫も遊び好きだからな。」
「次狼さんは会長とはいつ出会ったんですか?」
「俺は中学からだ、雪もな。ムチャクチャなヤツだった。まあ、今もさほど変わらんが。」
沸騰したお湯を、コーヒーの粉を入れておいたカップに入れる。
「中学から仲良くなったんですか〜。」
「今では友人としているが、初めは違ったよ。ほら、飲んでくれ。インスタントで悪いが、ブラックで良かったか?」
