「なんで俺の名前…。」
「有名ですから。図書室には飛んでこないでくださいね、貴重な本がありますから。」
本を拾いながら言った。
「ごめん、手伝うよ。」
落ちていた本を半分拾い集めて女の子に返す。
「ありがとう。」
「いや、俺の注意不足だから。」
「それではこれで失礼します。」
女の子が歩き出す。
「あ、あの!」
「何か?」
「君の名前は?」
「桐原(きりはら)…桐原遥。」
遥が振り返る。肩まで伸びた白髪が夕日を浴びてオレンジに輝く。
「桐原…さん。」
「遥でいいです。好きじゃないんです姓で呼ばれるの。後、さん付けも嫌いです。」
「そうなんだ…。俺も直樹でいいよ。」
「直樹、他にご用は?」
「いや、もうないよ。」
「そうですか、それでは。」
遥は女子寮の奥へと消えていった。
「桐原…遙。」
直樹はどこか不思議な雰囲気の遙のことが気になっていた。
………………………。
……………。
……。