「暴れてきなさい、エリーゼ!!」
真里香が持っていた鎖を離す。
「グゥガァーッ!!」
沙織に向かって一直線にエリーゼが走っていった。
「猛獣使いだな…。」
ボソッと直樹が呟く。
〈真里香は猛獣使いのスキルを手に入れた。〉
「出番よ、彩華!しっかり恩を作りなさい!」
『よっしゃ〜!!』
真里香が電話を切ったと同時に、沙織に飛びかかろうとしたエリーゼの前に彩華が出てくる。
「お嬢さん、危な〜い!」
棒読み口調で彩華が言いながら飛び出す。
「?」
ようやく後ろの騒ぎに気づいた沙織が振り返る。
「ウガァァァ〜!!」
「さあ、化け物よ!この私が相手を――――ゲフッ!?」
事前に決めていたセリフを言っている途中に、エリーゼは彩華の顔を踏み台にして飛び越える。
「なにしてんのよ彩華〜!!?ちゃんとエリーゼ止めなさいよ!逃げたら私の責任になるじゃない!」
作戦が失敗したと悟った真里香は後始末をどうしようかと焦る。
「まったく、しょうがないな…。」
直樹が一気にダッシュしてエリーゼに近づく。
今まさに沙織に襲いかかろうと飛んでいるエリーゼの腰に手を回し、抱き寄せて沙織を飛び越える。
暴れるエリーゼの口に携帯食料を放り込む。すると、雛鳥が口を開けてエサをねだるように、エリーゼは「アー、アーッ!」と言いながら口を開けてくる。
