いつものベージュのスーツを着た氷が出席簿を持って教室に入ってくる。
自分の席に座った直樹が背中をチョンチョンとつつかれる。
「今日も派手に吹っ飛んでたな〜。一体どこに突っ込んだんだ?」
「保健室だよ悠斗。前までは見たり逃げたりだけだから、会長の強さって完全には知らなかったけど、あれは異常だ…。」
「そりゃそうだ。俺達風紀委員全員が一斉に攻撃しても未だ一発も当てられねぇんだから。」
悠斗が風紀委員に入ってから、放課後に蓮と風紀委員が訓練するのが増えた。たまに直樹も混じって訓練するが、勝つどころか触れてさえいない。
HRが終わり、氷が教室から出て行くと、教室がガヤガヤと騒がしくなる。
「お願いだよ〜!」
その中でも一番大きな声を出す者がいた。
「私に協力して!一緒にやろうよ〜!」
彩華である。
「君もしつこいな…。一度決めたら諦めない所は蓮にそっくりだ。」
年末に真里香から沙織の話を聞いた彩華は、新学期が始まってからずっと沙織を自分の作る生徒会に誘っている。
「私は恩にしか動かないと言っているだろう?悪いが入らないよ。」
「飴あげるから〜!」
「君は飴をもらったら大抵の頼みをきくのか…?」
「へ?うん。」
