「おう、蓮ちゃん!久しぶりじゃなぇか〜!ほら、持ってきな!」
綿菓子の屋台のおじさんが蓮に袋に入れた綿菓子を投げる。
「サンキュー、おっちゃん。」
軽く手を振って、少し離れた場所に向かった。
少し高台にあるこの神社の裏側、木が生い茂る中を少し歩くと、町が見下ろせる場所、蓮のお気に入りの場所である。
蓮はポケットから小さいビンを取り出した。知佳が作った薬で、蓮が飲めば性別が逆転する。効果は半日、性別が戻るときに体中が痛みに襲われる。
知佳に返えしたはずだが、ずっと前に無くしたと嘘を言って新しく作ってもらい、前から持っていた方を返したのだ。
「今では効果は約30分、戻るときには内臓にダメージ…結果、吐血する。」
椅子代わりに岩に座りながら、ビンを見つめて1人呟く。
「その薬、知佳に返したんじゃなかったのか?」
背の高い男が後ろに立っていた。
「奪いますか?涼(りょう)さん。」
彼は高杉(たかすぎ) 涼、知佳の兄である。
「俺は何も見なかった。ただ妹の友達に会っただけだ。本人が決めた事に俺は何も言わないし、ましてや実力行使なんてしないさ。」
「よかった。あなたには勝てませんから。」
過去に何度も手合わせしたが、蓮は一度も涼には勝てなかった。
