「ゴホッ!??」



とっさに口を手で塞ごうとしたが間に合わず、蓮の前に真っ赤な血溜まりができた。





「だ、大丈夫かい、蓮くん!?」




「げほっ…ごほっ…だ、大丈夫…ごほっ……。」


膝をついて、せき込みながら答える蓮を、隣で見ていたレンと後ろにいた橋本が背中をさする。






ドクンッと心臓が大きく鼓動し、蓮は体が燃えるような熱さを感じた。




「(なぜだ…薬の効果時間は半日、今はまだ1時間も経ってないんだぞ!?)」




自分の心臓を掴むようにジャケットを握りしめた。









『細胞にちょっと変化が見えるわね……。』



知佳の言葉が頭に浮かんだ。細胞の変化、それは体が薬に対して抵抗しようとして起こったものだった。







「(抗体か!?こんなにも早く?それに副作用も酷くなってる…。)」



髪が短くなっていき、体も大きくなっていく。数秒で男の姿になった。






「はぁ…はぁ…。」




「大丈夫?」




隣にいるレンが心配そうに尋ねる。





「ああ…ありがとな、もう大丈夫だ。」



血の付いていない方の手でレンの頭を撫でる。





「知佳くんに連絡した方がいいんじゃないかい?」




「本当に大丈夫だ、橋本さん。心配しなくていい。それより早く行こう。」



口に付いていた血を拭いて蓮は歩き出し、3人はヘリに乗り込み、無名県へ飛んでいった。