それは蓮を守るように、銃弾を防いだ。
「終わりか?」
狼のような鋭い視線を向ける。
「まだまだっ!」
円は先に小さな刃が付いたワイヤーを何本も投げていく。
蓮がもう一度地面を踏もうとした時だった。
「お母さぁ〜ん!」
この場に不釣り合いな声が聞こえた。
振り返ると、4歳くらいの女の子がボロボロのぬいぐるみを抱え、泣きながら歩いていた。
「(一般市民がいるなんて聞いていないぞ!?)」
蓮が女の子に駆け寄ろうとしたとき、背中に衝撃を受けた。
円が放った刃の付いたワイヤーである。
防弾防刃コートなので背中は大丈夫だったが、ワイヤーの1つが右手に刺さった。
「しまった!!」
円はそのワイヤーを引っ張り、刃に付いた血を舐める。
まるで砂漠で飲む水のように、目を閉じてゆっくりと口の中で味わってから飲み込む。
目を開けると、円の瞳は闇のような黒から、血のような真紅になっていた。
「これを待ってたの…。」
円は少し体制を低くすると、地面が割れるほど踏み込んで、一瞬で蓮の懐に入った。
