「そこのあなた、お待ちなさい。」
呼び止められて振り返ると、茶髪のショートカットの女子生徒がいた。
副会長の結城薫である。
「なんでしょう?」
少し首を傾げながら彼女は言う。
「リボンが曲がっていますわ。綺麗なんだから、身なりはキチンとしないといけませんわよ。」
彼女のリボンを直して、薫は教室のある本館の方へ歩いていった。
「いいところあるんだなぁ。」
そう呟いていると、後ろから女子生徒達の歓声が聞こえる。
「キャー!麗花様よ〜!!」
「いつ見ても綺麗ですわ〜!」
「抱いてくださ〜い!」
1人危ない発言をしている。
そんな彼女達の視線の先に麗花はいた。金髪の縦巻きロール、瞳はガーネットのよう。
「あら?」
不意に、彼女と目が合う麗花。
そして麗花は彼女の方へと歩き出す。
「こんな所で何をしているのかしら?」
他の生徒には聞こえない声で話す麗花。
「散歩です…。」
「女装して他校に散歩に来る趣味があったのね、直樹くんは。」
「ど、どうして、わかったんですか!?」
つい大きな声を出して慌てる直樹。
「そうね〜。あえて言うなら、その胸ね。あなたの筋肉の付き方から考えて、ちょっと大きいわ。後は雰囲気かしら。」