「食べればいいんだよ、優華が。」
菫の言葉を聞いた瞬間、優華の体に雷が落ちたような衝撃が走った。
「(ターゲット、ロック!)」
優華の目は直樹の唇の左端に付いているソースを捕捉していた。
「では、失礼します。」
「は、はい!?本当にやる気なの!!?」
慌てる直樹。
「いや、こういうのはちょ――――――」
言いかけて止まり、直樹は動かなくなる。
チャンスとばかりに、優華はペロッとソースを舐めとった。
直樹が動かなくなったのは、役得と思ったわけでもなく、諦めたわけでもない。
優華の後ろに信じられない事が起こっていたのだ。
目線の先には、彩華がクレープを食べていた。
それだけ見れば驚かないが、問題はその周りである。
クレープを食べている彩華の隣に、風船を持った彩華がいる。その奥にはレストランのメニューをじーっと見つめている彩華がいた。
合計3人の彩華がいるのだ。
「(なんだ?夢か?俺はまだ寝ているのか?でも、そこにいる彩華さんは等身大。夢とは違う。)」
疲れているのだろうかと、目を閉じて軽く指でマッサージしてから、もう一度見てみる。
そして直樹の思考は停止した。
