【2年6組・教室】
授業中だが、教室はガヤガヤと騒がしかった。
「やはり修学旅行は京都だな。」
窓際の後ろから2番目の席に座っている蓮が腕組みしながら呟く。
「まだ先の話なのに、みんな浮かれすぎだ。」
蓮の前の席に座り、黒板の字をノートに書きながら次狼が言う。
「難航してからね、仕方ないよ。」
授業中に堂々とノートパソコンを開いて、雪が修学旅行のプランを練る。
「むぅ…。やはりツインテールか…。」
蓮の後ろの席の菫は、自分の机に座りながら蓮の髪型を模索していた。
「あの…みんな、授業中なんだけど…。」
色白で痩せ気味の男が、左手に教科書を持ち、右手にはチョークを持っていた。
この気弱そうな男は、蓮達の担任教師、名前を成瀬誠司(なるせ せいじ)、36歳、既婚、娘が1人。
優しくて生徒に人気がある教師だが…。
「(みんなが僕を無視する…。ハァ…ハァ…。ゾクゾクする…気持ちいい…。)」
『ドM』である。
「そういえば、そろそろクリスマスだな。」
黒板横のスペースにあるカレンダーを見て次狼が言う。