【1分後】
「それではスタート!」
ピーッと笛を吹いて合図する。
ザバァーンと2人同時に湖に飛び込む。
「(姉貴には負けない!)」
「(毎回思うが、胸邪魔だな…。水の抵抗が大きくなる。)」
底にうっすらと見える直樹に向かって2人は泳ぐ。
「(ヤバイ!そろそろ息が!!)」
直樹は底で芋虫のようにクネクネ動いていた。
「(ああ…。やっと来た……。)」
2人の姿が近づいてくるのを見て安心する。しかし直樹の安心はすぐに砕かれる。
手を伸ばせば届く距離で、2人は戦い始めた。
本当に水の中なんだろうかと思うくらいの速さで2人がパンチやキックを繰り出す。
「(直樹くんは渡さないんだから!!)」
「(得意の水中、ターゲットが直樹だし、なかなか楽しませてくれる。)」
「ブグブグブ…。」
息を止めるのが限界で、直樹が空気を口から出してしまう。
「(おっと。)」
直樹を見た蓮が、彩華の攻撃を受け止めて引き寄せる。引き寄せた彩華の背中に両足裏を付けて、膝を曲げて一気に伸ばす。
彩華を踏み台に勢いを得た蓮が、直樹に近づき、抱えて浮上する。
「(姉貴ぃ〜!!)」
すごい速さで彩華が追いかけてくる。
「(悪いね彩華、ちょっと本気出すよ。)」
全ての力を出して追いかける彩華だが、蓮との距離は縮まらず、むしろ離れていく。
