「こうかな?」
少し体を前に傾ける。するとまるで本気で走っているように速くなる。
「すごいな!」
『前にするほど速くなります。しかし速すぎるとコントロールが難しいのでご注意を…。前方に敵を発見。』
モニターに小さく映っていたが、ズームするとトラ猫スーツがはっきりと確認できた。
『注意してください直樹、相手は試作型とはいえ戦闘用です。こちらは身体能力のアシスト、探索レーダーなど補助が専門の機体です。』
「あれだけの動きができれば大丈夫だよ。」
『了解しました。』
直樹は一気に速度を上げて、トラ猫スーツの背後に回り込んだ。つもりだった。
視界にはトラ猫スーツの姿はなかった。
「え?」
『直樹、後ろです。』
「がはっ!?」
後ろを振り返るよりも速く背中を鈍器で叩かれたような痛みが襲う。
「っ……!」
痛みを堪えながら、直樹はトラ猫スーツから距離をとる。
「痛っ〜!!猫スーツって、特殊な素材使ってるから頑丈なんじゃないの…?」
『いいえ。前々回の修理でマスターが軽量化を望んだので、このスーツには特殊繊維は使われておりません。耐水性の高い普通の素材です。』
「そうなんだ…。まあ、会長なら一発も当たらないし、いらないよね…。」
はあと溜め息を吐いていると、トラ猫スーツの目が光り始める。
『警告。前方に高エネルギー反応、回避してください。』
「言われなくてもよけるって!」
