「兄さんと、菫(すみれ)さんですね。」





「会長と仲が良さそうだね。」




見たままの事を言った。





蓮がとても落ち着いた顔をしていたからだ。






「2人は幼馴染みなんです。家が隣同士で昔はよく遊んでもらいました。」




昔を思い出してか、優華が微笑みながら話す。






「何を話してるのでしょう?」




「近づいてみようか。」




2人のいる手前の木に隠れて顔だけ出す。






「あの案件はどう思う。」



胡座(あぐら)をかいて蓮が言う。






「答えはもう出てるんだろう?」




正座してお茶を飲みながら菫が答える。




その言葉に蓮が笑う。






「あはは。やっぱり俺のことを良く分かってるな。」




「そんなことより、ほっといていいのかい?」




「別に聞かれて困る話はしてないしな〜。」




寝転がりながら蓮が言う。






「でも私は、後ろに立たれるのが嫌いなんだ…。」




菫がおもむろに、上着のポケットに手を入れる。





直樹は急に自分の周りの空気が冷たくなるのを感じた。




背を向けている菫の右手が一瞬ブレた。






トスッと軽い音が聞こえたかと思うと、目の前の木に、長さ10㎝くらいの小刀が刺さっていた…。




ゾッと全身が凍りつく。





「出てくるといい。優華ともう1人…。」





命を危機を感じたので、優華と共に出ていく。