「敬語か命令口調しか話さなかったお父様が『我が家の警備システムが、幼稚園児に突破されるなんて、チョーうける!』とか言い出すし。あなたと出会ってからおかしな方に進んでるわよ。」
「でも楽しいでしょ?」
まるで子供のように笑いながら蓮が言った。
「それを言われると何も言えないじゃない…。って、もうすぐA地点よ!ここから道が広くなるから、反撃するにはちょうどいい場所よ。どうする?」
「なあ、麗花。幼馴染みっていいよね。」
突然、蓮がそんなことを言い出す。
「フフッ。そうね、いいものよ幼馴染みは。やっぱりそろわないとね。」
麗花は言葉の意味を理解したようで、笑いながら答えた。
2人が目指すA地点には、蓮がたまに乗っているバイクが道の端に置かれ、その隣には濃い紫色の長髪の女の子が、1人用の小さなシートの上でお茶を飲んでいた。龍堂菫である。
まだ距離が離れているので、お互い目では確認できるはずがないのだが、これが信頼というものだろう。
