おそらくちょうど帰ってきたときに、ずぶ濡れスケスケの真里香に会ったのだろう。
悠斗のことだから、また何か真里香が気に障ることを言ったに違いない。
多分、真里香の機嫌が悪いのは80%くらい悠斗が原因だ。
はあと溜め息を吐く。何やってんだと呟くと、直樹は同時にあることに気付いた。
真里香+悠斗=機嫌の悪い真里香
機嫌の悪い真里香+悠斗=ボロボロの悠斗
機嫌の悪い真里香+自分=ボロボロの自分
「(ヤバ〜〜い!!)」
心の中で叫ぶと同じタイミングで後ろからガチャンと音がした。
真里香がドアに鍵をしたのだ。
「さあ、始めよっか…。」
ギュッとグローブをはめ直す。
「うふふ…あはは!あーはっはっは!!」
この空き部屋は完全防音らしく、真里香の歓喜に満ちた高笑いも、直樹の悲鳴も、誰にも届かなかった…。