「エリーゼ、映画見て勉強したヨ。」
「はい?え……まさか…勉強って…。」
「ユウトいないからナオキにスル…。」
薬と水を口に含み、両手を直樹の頬に当てる。
「ち、ちょっとエリーゼ!?そんなことしなく……う……っ…。」
急に叫んでよけいに熱が上がって、言葉が出なくなり抵抗もできなくなる。
エリーゼの顔がどんどん近づいてくる。
「(ヤバい…体が動かねぇ…。声も出ないし。やっぱりこういうのは、恋人同士がするものだし…でもエリーゼからすると、挨拶みたいなものなのかもしれない…。てゆ〜か俺、キスとか初め―――――)」
どこかの公園で、小さな男の子と女の子がキスをしていた。
男の子は子供の頃の直樹、女の子はピンぼけしたように顔が見えない。
そんなイメージが脳裏をよぎった。
「(幼稚園くらいのときの俺…?女の子は誰だろ?)」
甘いシャンプーのにおいがして、考え事を止めると、エリーゼの顔がすぐそこまで近づいていた。
「(エリーゼ…。)」
熱で意識が朦朧とする。半ばどうにでもなれという感じで直樹は目を閉じた。
「ダメェェェ〜ッ!!!」
聞き慣れた声と共に、その子がエリーゼにタックルする。
「っ…!??ブゥーー!!」
急にタックルされたために、エリーゼが水を吹き出す。
それは当然、直樹の顔にかかる。
「ダメ、ダメ、ダメ!ダメだよ!!」
