「あいよ。」
何度も振り返りながら悠斗が部屋を出る。
「まあ、寝てれば治るしな…。ゆっくり休めるいい機会かも。」
まぶたを閉じるとすぐに寝てしまった。
………………………。
……………。
……。
どれくらい時間が経っただろう?
1時間?5時間?それとも半日?もしかすると30分も経っていないかもしれない。
それを知ることは目を閉じている直樹にはできないだろう。
不意に額に何かが当たる感触がして、直樹が目を開ける。
「起こしちゃった?」
「真里香……?」
目を開けると真里香がいた。額には冷たく濡れたタオルが乗っていた。
壁に掛かっているデジタル式の時計を見ると、AM10:27と表示されていた。
悠斗が部屋を出たのが7時前くらいなので、どうやら3時間くらい寝ていたようだ。
「会長に聞いたのよ。」
「そっか、悠斗が会長に言ってくれたんだな…。」
「大原悠斗が風邪を引くってことも驚くけど、直樹が風邪ってのも驚くわね。」
「一応、普通の人間だから……。」
「そう?会長に鍛えられて、もう普通じゃないでしょ。」
笑いながら真里香が言う。
「逃げるの間違いだ。鍛えられてなんかないよ…。」
「それでも強くなってるわよ、初めて見たときより。結果的には鍛えられてるんじゃない?」
「そうなるのかな……。」
「喉乾いてない?何か飲む?」
