「え?生徒…会長…?」
「そう、生徒会長になって、兄貴の跡を継ぎたいの!!」
その顔は昔、説明会で出会った頃の蓮に似ていた。
でも、同じではない。
蓮は努力している顔。
彩華は努力をすると決めた顔。
いつか蓮は卒業する。志を受け継いでくれるのが彼女なら、どんなに嬉しいだろうか。それは同時に、蓮が卒業した後でも、力になることができるってことじゃないだろうかと、直樹は思う。
『誰かと同じ理想を持って、そのために頑張ってみろ。』
説明会のときに言われたことを思い出した。
「(ああ、そうか。俺は会長の理想に惚れたんだ。会長のためにしていても意味がない。俺が惚れた会長の理想のためにしないと、でないと俺も会長も笑えない。)」
ようやく自分のやるべきことに気づいた直樹。
「だから、手伝ってほしいの!兄貴の理想のために!」
「俺達の理想でもある…でしょ?」
「うん、そう。そうだよ!」
直樹の言葉に彩華が笑う。
「よろしく、彩華さん。」
「よろしくね、直樹くん。」
互いに手を出し、握手をする。
「でも、今すぐって訳じゃないの。今はまだ自分なりに兄貴の理想を考えたい…。」
