食べ終わり、2人はレジに向かう。
「1860円になります。」
店員から値段を聞いて、直樹が財布からお金を出そうとすると、隣で蓮が財布を開けようとしていた。
「会長、俺が払いますから。」
「いや、しかしな…。」
「誕生日ってこと忘れてません?財布しまってください。」
しぶしぶ財布をポケットに戻す蓮を横目にお金を払う直樹。
店を出て、自転車を持ってくる。今度は蓮が後ろ向きに座る。
こぎ始めて、空を見上げる。いつの間にか、空はオレンジ色に変わっていた。
「なあ、直樹。龍堂学園に入って、後悔していないか?」
後ろに座っている蓮が言った。
「何言ってるんですか?会長が説明会でその気にさせたんでしょう。」
「だからこそ聞いてるんだよ。」
直樹から顔は見えないが、恐らく真剣な表情で言っているんだろうと感じた。
「後悔なんてしてませんよ。友達もできたし、学園生活や部活も楽しいですし。会長に殺されそうになるのは、ちょっと困りますけど。それもひっくるめて楽しいです。」
「そうか。」
少し振り返ってみるが、やはり顔は見えない。
「来年の誕生日は、プレゼント用意しときますね。」
「あはは、またあの店でもいいぞ。」
蓮が笑いながら言う。どうやら元気が出たようだ。
