「…直樹、絶対に悠斗と話しちゃダメだからな。」
「わかったけど。ホントにそれで勝てるの?」
それは綱引きのスタートの合図が鳴る前に、拓也が小声で言ったこと。
綱引きをしている間、悠斗を完全に無視する。
果たしてこれで勝てるのだろうか?
「オーエス…OS…オーバー・ソウル!」
なんとなくかっこいい言葉を当てはめて、悠斗は嬉しそうに笑っていた。
「どうだ!かっこいいだろ拓也?」
「………………。」
反応せずに、ただ綱を引っ張る拓也。
「なあ、直樹ならわかるだろ?かっこよさが?」
「…………………。」
悠斗には悪いが、これも勝つため、直樹は心を鬼にして無視する。
「無視するんじゃねぇ〜!!」
悠斗が綱を一本背負いするように、全力で綱を引っ張る。
「…今だみんな、綱を離せ!」
「えっ!?う、うん。」
拓也に言われて、クラスのみんなが綱を離す。
悠斗に全力で引かれた綱は、今まで均衡していたことが嘘のように、こちらに引き寄せられる。
まるで釣り針にかかった魚のように、相手チームが中央線を越えて、綱を持ちながら倒れていた。
