それは今朝の電話で旅行と共に聞かされたことだった。
彼の両親は元々フリーダムで、牧場始めたのは母親が「なんだか牧場がうまくいきそう」と言ったのがきっかけであり、これが成功したのだった。
そして今回もまた、母親が「なんだかガラスが売れそうよ」なんて言い出したらしく、阿部家は幸運な母親によって守られてきたと言っても過言ではない。
「それはまた唐突な…。しかたない、そこのドアを開けてみろ。」
蓮が三つ編みした長い髪を左手で遊びながら右手で、直樹から見て左側のドアを指差す。
ドアを開けるとベッドが2つあり、奥のベッドの上には荷物が置かれていた。
「一応生徒会用なんだ。たまに書類整理とか、遅くなったときに使っているものなんだけどね。」
「そうなんですか。奥の方に荷物置いてますけど、急に帰れなくなった人が他にいるんですか?」
「いないよ。それは私の荷物だ。」
何をバカな事を聞いているんだみたいな顔して、蓮が直樹を見る。
「か、会長ですか!?」
「色々やることがあってね。とりあえず終業式前には荷物を移動させておいてくれよ。」
そう言って、蓮が書類をまとめて部屋を出て行った。
